気が小さい太めゲイなむらさき日記

割と周りに知られている気が小さい大柄なゲイです。そんな私の日常や気になったことや想いを。

誕生日だから

10月某日は大好きな彼の誕生日でした。

もう遠くに旅立っているので、誕生日も何もないのですが。

でもせっかくだから弔おうということで、

共通の友人たちとお寺に参って来ました。

 

 

最初、その打診を受けたときは、行く気は全くありませんでした。

誕生日に湿っぽいことをするのは

なんだか違っているような気がして。

もっと楽しく食事でもしてお祝いした方がいいんじゃなかなって。

でも散々迷った挙句、参ることを決断しました。

 

なぜ心が変わったのかと言われても説明ができないのですが、

きっとこれがあいつのためになるんじゃないかな、と。

普段何もしてあげられていないし、もしかしたら生者の驕りなのかもしれないけれど、

何かしらあいつが心穏やかになってくれるのではないかと。

また、普段は割と避けようとしているのですが、

あえてあいつが死んでしまったことを全身で受けてもいいのではないか、

と思ったことも決断した理由になるのでしょう。

 

昨年のこの日、一緒に誕生日をお祝いしていなかったのです。

私の怠慢もあり、誕生日を聞いたのがとっくに過ぎたあとで、

「じゃあ来年、盛大にお祝いしよう」って話していたはずです。

誕生日近くのお休みの日にどこかイイレストランにでも行って、

ホテルに泊まって、遊べたらいいな、なんてうっすら考えていました。

 

当日、お寺に伺い、弔いをしてもらいます。

あいつの戒名が呼ばれ、本名が呼ばれると、
もうこの世にいないという現実が心に打撃を与えてきました。
何処かにいるのかもしれない、私の知らないところで幸せなのかもしれない、
そんなかすかな希望を木っ端みじんにしてしまいます。
名前が呼ばれた瞬間、唇をきつく噛み、感情と大声があふれ出ないよう
必死に我慢をしておりました。
可能ならば泣き叫び、全てを壊したくなるほどの衝動を、
理性によって辛うじて封じ込めておりました。

 

手を合わせ、目を閉じ、住職のお経に耳を傾けます。
初めて出会ったとき、一緒にご飯を食べたとき、そっと手を握ったとき、
寝顔を見たとき、大笑いしているとき、カラオケをしているとき、
ドライブのとき、隣で微笑んでいるとき、唇を重ねたとき
いろいろな瞬間のあいつが現れます。 

 

 

あの楽しく幸せだった短い日々。

毎月会うのが楽しみで仕方なかった気持ち。

我慢できなくて金曜日の夜から移動して、夜から遊んだとき。

眠りにつく瞬間まで密着し、顔を近づけ、くだらないことを話したっけ。

楽しい、幸せ、面白い、もっと傍にいたいという正の感情と共に、

苦しい、辛い、恐ろしい、もう一緒にはいられないという

負の感情があふれ出そうになります。

なぜ、どうして、やはりこの気持ちが拭えません。

可能ならば今すぐにでも、という思いが心の奥底で蠢きます。

でもそんなことがかき消えるほど、あいつの笑顔が浮かんで来ました。

 

 お経が終わり、住職の話がありました。

「たとえ姿かたちが見えずとも、心の中で生きている。

 幸せを感じれば幸せを、辛さを感じれば辛さを、

 心の中で生きながら感じている。

 だから幸せ、楽しさをたくさん感じれば、

 その分安心して過ごしていけるはずだ。」と。

 

ぐっとこみあげる感情に蓋をし続けます。

本当にあいつはいなくなったこと、そんなことわかっているはずなのに、

それでもそれを正面から捉えられなくて、

何度も何度も否定し続けていたのに。

利害関係のない全くの第三者からその事実を話されると、

まざまざと現実を突きつけられている気持ちになります。

心の中の彼に幸せになって欲しいと思う前に、

自身の心の整理が未だに全くついていないのです。

 

彼の幸せを願えない私はどうしたらいいのだろう。

遠くに行ってしまった彼の安らかな旅路をどうして願えないのだろう。

何をしたら彼は喜んでくれるのだろう。

どうしたら私は彼のことを幸せに思い出せるのだろう。

どこまで行っても私が私が、の気持ちになってしまい、

そのことを自身で許すことができません。

 

そんなことを考えてしまい、どうしようもなくなり、

ますますのしかかってくる現実に押しつぶされそうになる。

そんな気持ちにになり、一刻も早くお寺から出てしまいました。

 

その後は友人たちと思い出話をしながらご飯を食べました。

新たな発見もあり、笑顔で誕生日を祝えたんじゃないかな。

 

ひとりでも私は生きられるけど

でもだれかとならば 人生ははるかに違う

強気で強気生きてる人ほど 些細な寂しさで

つまずくものよ

 

呼んでも呼んでも とどかぬ恋でも

むなしい恋なんて ある筈がないと言ってよ

待っても待っても 戻らぬ恋でも

無駄な月日なんてないと言ってよ

 

めぐり来る季節をかぞえながら

めぐり逢う命を数えながら

畏れながら憎みながら いつか愛を知ってゆく

泣きながら 生まれる子供のように

もいちど生きるため 泣いてきたのね

 

Remember 生まれた時だれでも言われた筈

耳をすまして思い出して最初に聞いたWelcome

Remember 生まれたこと Remember出逢ったこと

Remember一緒に生きてたこと そして覚えていること

 

ふりかえるひまもなく時は流れて

帰りたい場所がまたひとつずつ消えてゆく

すがりたいだれかを失うたびに

だれかを守りたい私になるの

 

わかれゆく季節をかぞえながら

わかれゆく命をかぞえながら

祈りながら嘆きながら どうに愛を知っている

忘れない言葉はだれでもひとつ

たとえサヨナラでも 愛してる意味

 

Remember 生まれた時だれでも言われた筈
耳をすまして思い出して最初に聞いたWelcome

 

Remember けれどもしも思い出せないなら

わたしいつでもあなたに言う 生まれてくれて Welcome


Remember 生まれたこと Remember出逢ったこと
Remember一緒に生きてたこと そして覚えていること

「誕生」中島みゆき

 

K、お誕生日おめでとう。