気が小さい太めゲイなむらさき日記

割と周りに知られている気が小さい大柄なゲイです。そんな私の日常や気になったことや想いを。

#わたし昨日映画を観ました ~19日目「アルプススタンドのはしの方」~

alpsnohashi.com

2020年 75分 日本映画

 

気になっていたのですがすっかり忘れておりまして、

どうにか地元映画館の公開最終日に、観ました。

 

甲子園の第1回戦、全校生徒が応援に駆り出される中、

野球をまったく知らない、「やすは」と「ひかる」は

端っこの方でよくわからず試合を見ていた。

あまりのトンチンカンな様子に、

近くにいた元野球部の「藤野」が近づいてくる。

少し離れたところに学校一の秀才「宮下」が何も言わずに野球を眺めている。

そんな4人の青春映画。

 

基本的に野球のシーンはまったくありません。

応援の声とバッティング、観客の目線とテンション

後は演者の解説で試合の流れを掴んでいきます。

 

ここからうっすらネタバレです。お気をつけて。

 

 

ただただアルプススタンドのはじでダラダラしゃべって、

応援したりしなかったり、噂話をしたり、何気ない会話をしたり。

でもその中で一人一人が抱える悩みだったり悔しさだったり、

葛藤だったり焦燥だったりが浮彫になってきます。

それぞれの想いがぶつかり合い、時に傷つき、傷つけあいながらも、

最後はスカッと終わる、そんな内容です。

 

劇中で何度も使われる言葉に「しょうがない」があります。

部員がインフルエンザになったため、全国大会に出られなかった演劇部

自分よりも才能のある部員がいたため、やめてしまった元野球部

好きな人に恋人がいることを知ったため、どうしたらいいかわからない帰宅部

 

いろいろな「しょうがない」を強引に飲み込まざるを得ないことは

誰にだってあることだと思います。

高校生の4人もしぶしぶ現実を受け入れ、辛い思いをしながらも

その気持ちにどうにか折り合いをつけつつ、生きていっています。

少し足元の方に目線が行っていることに気づきながら、

そんな自分から目を逸らしている者もいれば、

人生なんてそんなものだと開き直っている者も。

どちらも一種の自己防衛本能なのかもしれません。

 

「しょうがない」と口に出して言いつつ、行動で示しつつも、

本心は「しょうがない」なんて思いたくもないし、

「しょうがない」なんて受け入れたくもないことでしょう。

でもどうしようもない、どうにもならないからこそ

「しょうがない」と自分の中で終止符を打ち、強引に進んでいきます。

 

その「しょうがない」が自分の中にあるだけなら何もないのでしょうが、

格上の相手と目の前で試合をしている野球部員にも

「しょうがない」をぶつけ始めます。

点をとられ、アウトをとれず、辛い戦いに挑んでいる野球部員に。

 

しかしあることがきっかけとなり、少しずつ4人の気持ちが変わっていきます。

必死になって白球を追いかけている野球部員に、

格上の相手に縋り付いている野球部員に、

大勢の観衆のプレッシャーの中で試合をしている野球部員に、

心のそこから自分たちの応援をしていきます。

 

ラスト近くのこのシーンが、私とても大好きで心を撃たれました。

あれだけどうせ負ける、なんて思っていた「やすは」や「藤野」が

声を張り上げてエースピッチャーに、控えの打者に

しっかりと応援をするんです。

気持ちを上手く表現できなかった「宮下」も

大声をあげてその試合展開を見守り応援をします。

 

「頑張っている人に『しょうがない』なんて言うのは失礼だよ」

うろ覚えですがこんなセリフがありました。

いくら自分が「しょうがない」と飲み込み続けていたとしても、

その考えを今なお頑張っている人に向けるのはいいことではない。

言葉にすれば簡単なことであり、事実なのでしょうが、

なかなかこれを実践することは難しいはずです。

 

ともすれば努力すること、努力する人を冷笑することもあり得る

高校生が、心の底から頑張っている野球部員を応援する。

まさに「青春」を感じてしまいます。

私にはまったくなかった青春を、共に体験しているような気持になりました。

 

お話としては仕方がないのですがいろいろなことがポンポン進み、

実際にはなかなかないだろうとは思うのですが、

それはフィクションの世界であると割り切って、

あなたもアルプススタンドのはしの方で一緒に応援しましょうよ。

 

ものすごくオススメです。