気が小さい太めゲイなむらさき日記

割と周りに知られている気が小さい大柄なゲイです。そんな私の日常や気になったことや想いを。

THE LAST DAY & THE NEXT DAY(ネタバレあり)続き

f:id:violet_roses:20191223124841j:plain

 

続きを書きます。

きっとネタバレになりますので、ご注意を。

 

 

 

林灰二より本作について】
「死ぬ前に一番最後に声に出す言葉は?」この質問に応えるのは誰にとっても簡単じゃないと想う。「最後の晩餐」について聞かれたなら一番好きな食べ物を想い浮かべたら良い。でも「言葉」となればそうもいかない。答えに行き着くには、自分がどんな人生を歩む末に何を想うのかを考えなければいけない。どんな満足や後悔を重ねて自分は誰に向かって何と言いたくなるのか。別れの言葉はいつも決まってる。でも最後の別れを「サヨナラ」なんかで終わってたまるかって想っている。本作への取り組みは全てを含むたった一言を探す旅の様である。

 

川崎太郎は死ぬ前に何を言いたかったのでしょう。

また川崎の代わりに死んだ入院患者はどんな言葉を言いたかったのでしょう。

途中役者の台詞で「お前らは外の世界から忘れられていく」(うろ覚え)

とあります。入院することで社会に取り残されていく不安と恐怖、

川崎は徐々にその不安が強くなり、精神的に不安定になります。

「人は二回死ぬ、一度目の死は肉体の死のこと、二度目の死は忘れられること」

劇中で中井が言うセリフです。

実際入院患者だった厚木や中井は二度目の死を迎えているようです。

部下も家族も彼らのことを覚えておらず、

唯一忘れていない川崎も自分の記憶に自信がなくなっています。

 

肉体が死に、自分のことが忘れられていく。

舞台では死んだ人の部下や妻が川崎のものになっていきます。

これって舞台上の短いスパンで見ると非常に不自然に見えますが、

日常生活で、数か月あるいは数年というスパンで見た場合、

自然なことになのではないでしょうか。

死んだ上司の部下はきっと誰かの部下になることでしょうし、

配偶者が死んだとしても、また違う人の配偶者になることだってあります。

死んだ当初は悲しくてもずっとずっとその人のことを忘れないってことは、

なかなかに難しいことではないでしょうか。

確かにその時は忘れないようにしよう、ずっと覚えていよう、

と考えていても、いつしか記憶は虚ろになり、大海に絵の具を一滴垂らしたように

いつのまにか雑多な日常と混ざっていき、

ふとしたきっかけがなければ思い出せないようになってしまいます。

 

前述した脚本家の林さんの言葉「死ぬ前に一番最後に声に出す言葉は?」

舞台を観終わってからずっとずっと心に残っております。

私が最後に出す言葉はなんだろうって、誰に語り掛けられるのかって。

人は誰でも死にますし、その死がいつ来るかはわかりません。

1分後かも、1時間後かも、1年後かも、10年後かも、

はたまたそれよりも早くかもしれませんし、遅くかもしれません。

死ぬ間際で必死になって言葉を出そうと思ってもきっと無理でしょうから、

ある程度余裕のある時期に、とは思っているのですが、

それでも最後に出す言葉は「ありがとう」なのか

「まだ死にたくない」なのか、はたまた断末魔の叫びなのか。

 

最初に川崎が死んだとき、姉に何かを伝えようとしました。

しかし胸の苦しみのせいでその声は小さかったようで、伝わらなかったようです。

二度目の死の際は病室から出て行った彼女に言葉を伝えようとしましたが、

彼女に会う前にこと切れてしまいました。

三度目は母親が倒れて危険な状態だと聞かされましたが、

一旦は合わせる顔がないと見舞いに行くことを諦め、

考え直し、いざ行こうとした瞬間に死が訪れてしまいました。

どんなに言葉を伝えたくても状況がそれを許してくれない可能性があります。

どれだけ心残りなことでしょう。どれだけ無念なことでしょう。

 

言葉を紡ぐにはしっかりと今を生きなければと考えます。

私は割と自由に生きていると自覚しております。

周りに迷惑をかけながらも、自分の生きたいように生きていると思います。

好きな人に好きと伝え、素敵なヘテロセクシャルな方に恋をして、

私はゲイだとカミングアウトを多々行い、

気になる映画も気になる舞台もできる限り観るようにし、

行きたいところに行き、食べたいものを食べ、

気に入らない人とは極力付き合わないようにして。

そんな気ままな生活をしているのですが、最後に出す言葉が何なのか。

いまだに明確な答えが出てこないのです。

 

 

感想なのか解説なのか、そのどちらともとれない内容になってしまいました。

非常にモヤモヤと心がしておりましたので、

書けたことで非常にすっきりとしました。

この舞台を観られて本当によかったと思います。

ちょっと劇団の舞台に興味が出てきたので、色々観てみたいなと思っております。

地方に住んでおりますのでなかなか行けないかと思いますが、

いろいろと伺えたらいいなぁ。 

oi-scaleさんの舞台を追いかけていけたらいいなとも思います。