気が小さい太めゲイなむらさき日記

割と周りに知られている気が小さい大柄なゲイです。そんな私の日常や気になったことや想いを。

「あなた」と「彼女」と「わたし」 ~この世に二人だけ~(歌詞の世界)

歌詞の世界

私が好きな曲の歌詞を私の独断と偏見で語っていく記事となります。

今回は中島みゆきさんの「この世に二人だけ」です。

繰り返しますが、私の独断と偏見を書き連ねていくことになりますので、

内容が皆様の考えている内容や作詞者本人のものとは異なる可能性が

大いにあるかと思いますが、ご了承いただければ幸いです。

 

 

この曲は以下の歌詞から始まります。

あなたの彼女が描いた 絵の載った本をみつけた

やわらかなパステルの色はそのままに

あなたの好みの色 

(「この世に二人だけ」より)

本屋さんでふと本を見つけてしまったのでしょう。「彼女」が描いた絵を。

絵を描いた人の名前ではなく、色の具合から「彼女」が描いた絵を

見つけてしまったのでしょう。

 

あなたは教えてくれない 私もたずねたくはない

夕暮れの本屋は風任せ つらい名前のページをめくる

(「この世に二人だけ」より)

「あなた」から「彼女」の存在を教えてくれなかったのでしょう。

「私」も自らたずねたくはない、怖さとプライドと悲しさと

さまざまな感情から「たずねたくはない」と「あなた」から聞くことを

やめたのではないかと思われます。

 

二人だけこの世に残し 死に絶えてしまえばいいと

心ならずも願ってしまうけど

それでもあなたは私を選ばない

(「この世に二人だけ」より)

この曲のサビの部分です。なんとも言葉にしにくいような複雑な感情です。

誰も彼も死に絶えて「あなた」と「私」だけの二人の世界が来たとしても

「あなた」は「私」を「それでも」選んでくれない、と「私」は考えます。

そんな考えを持っているにも関わらず、そんな世界になればと

心のどこかで願ってしまう。非常に辛い気持ちです。

 

ここのサビの部分も含めてこの歌は非常に淡々と歌っているように聴こえます。

感情を露わにして声を震わせて、という部分は特別にありません。

それが逆に私の気持ちを揺さぶります。

なぜならこの曲のサビの強い感情を、一所懸命に抑え付けつつも

それでいて強い感情を言葉にしてしまう。

それくらい「あなた」への気持ちが非常に強く、脆く、儚い。

 

曲はまだ続きます。

ラクションが怒鳴っている つまづいて私は転ぶ

放り出された本を拾いよせ 私はひとりひざをはらう

(「この世に二人だけ」より)

本屋から出た「私」、クラクションが鳴ったから転んだのか

転んだからクラクションを鳴らされたのかはわかりませんが、

手にしていた、そう購入した「彼女」が描いた絵の載った本を

落とし拾いよせています。この本は他でもなく、

きっと本屋でみつけた本だと思われます。

そう、「私」は「彼女」が描いた絵の載った本を買ったのです。

 

ここで注目したいのはもう1点。二箇所「私」が出てきます。

「つまづいて私は転ぶ」「私はひとりひざをはらう」

そう、「私転」び、「私ひとりひざをはらう」のです。

少し飛躍なのかもしれませんが、「あなた」と「彼女」は

転ぶこともないでしょうし、もし転んだとしても

ひとりでひざをはらうこともないのでしょう。

たとえ「あなた」が転んでも「彼女」がひざをはらい

たとえ「彼女」が転んでも「あなた」がひざをはらう。

それに対して「私」は転んでも「ひとりひざをはらう」しかないのです。

だって「あなた」は「私」とは一緒にいないから。

「あなた」は「彼女」と一緒だから。

 

嫌いになどなれるはずない あなたの愛した女(ひと)だもの

夕暮れの木枯らしにあおられて あなたと同じ苗字が滲む

(「この世に二人だけ」より)

 「彼女」のことを嫌いになんてなれないのです。

だって「あなた」が愛した人なんですから。

「あなた」が愛した人を嫌うなんて「あなた」に対して出来るはずがない。

のです。本心はどうであれ、嫌いになどなれるはずがないのです。

 

最後の最後に「彼女」の苗字が「あなた」と同じであることがわかりました。

本屋で本を見つけたのは「あなた」の好みの色で描かれていたからでしょうか。

「彼女」の苗字が「あなた」と一緒だったからでしょうか。

きっと「私」は絵の色が「あなた」と一緒であったから目に留まり、

その後に「彼女」の苗字が「あなた」と一緒であったことに気づいたのではないか

と思います。

 

本が出版されていることもきっと知らなかったのだと思います。

それでもパステルで描かれた「あなた」の好みの色に気づいてしまった。

「私」の「あなた」への思いは恋と愛なんて言葉では言い表せない

もっと内面からのさまざまな感情の集合体ではないかな、と。

心の奥底からの深い感情で「あなた」のことを愛していたのではないでしょうか。

だからこそ「あなた」が愛した「彼女」を嫌うことなんてできないし、

二人だけ残して死に絶えてしまえばいい、なんて考えてしまう。

 

淡々と「私」の日常のような風景を歌い上げているだけなのですが、

その裏に見え隠れする強い「私」の感情が恐ろしくもありそれでいて儚く思えます。

 

良かったら一度聞いてみてもらえたら幸いです。